(図20)
(図19)
(図18)
(図17)

  当Clinicでは、すべてInterdisciplinary Treatment(包括的治療)を基本にしている。患者は38年間当Clinicで口腔管理をしている症例

である。開業当初から当診療システムで38年間口腔管理をしている。Panorama、CTなどレントゲンを介しての顎骨・歯槽骨の形態・骨

量などを観察したもので、歯槽骨の吸収状態から診ても、ほぼ
二十歳代に相当するように思われる。過去の論文を見ても、口腔内写真

程度がほとんどである。DentalやPanoramaを付加されている症例も少ない。CTやPocket Depthなどの詳細なデータは見られない。しか

も、審査・診察時点の症例が多く、長期経過(38年間)のデータの整っているものはみられない。生存症例では
トップクラスに位置するよ

うに思われる。歯科医や衛生士のその道のプロ達でも、ここまで維持できている人は少ないであろう。

 当Clinicでは、Red complex(Porphyromonas gingivalis:P.G.、Treponema denticola:T.D)、Tannerella forsythia:T.F.)とAggregatibacter

actinomycetemcomitans(A.A)を原因菌とした
感染症対策と全身管理を主としたLifestyle Related Disease(生活習慣病)の一つとして治

療を行っている。


患者:83歳、女性
医療面接:子宮癌(全摘)、卵巣全摘、狭心症(1997年)、白内障手術(RL)(2009年)。帯状疱疹(体幹部、肋間神経支配部)(2010年)は当Clinicで治療。M.K.(胃癌)部分(1/2)開腹手術(2014年)。M.K.手術前の周術前口腔ケアでは、大学病院口腔外科受診時、担当医が口腔状態の良好状態に驚愕されたようだ。現在も毎月のS.P.T.(Supportive Periodontal Therapy)を継続中。

■成功のKEYは患者サイドと医療サイドに

1: 医療に関してのIQが低い、興味、関心のない患者は成功し
  ない。

2:経済的に日々の生活に負われていては十分な医療は受けら
  れない。応急処置だけに終わる。

3:患者の意識改革が必要である。

4:“もう年だから”と諦めるようでは、健康は維持できない。

5:歯科医師の軸がぶれるようでは、システムの継続性はない。

6:歯科医師や衛生士が自ら率先して模範を示さないと、患者は
  付いてこない
(図16)
■歯周病管理:軟組織
(図10)2015年5月26日、83歳。4番は38年間再治療の必要なく、機能している
(図9)2015年5月26日、83歳
(図8)2015年5月26日、83歳
(図7)2015年5月26日、83歳
(図6)2015年5月26日、83歳。歯間乳頭部の退縮は認めない

■Volume Rendering(CT)

 形態学的骨密度が極めて高い。病的骨欠損部位が無い。副鼻腔に関しても目立つ所見は認めない。83歳になるまで全顎および骨密度の高い状態で健康維持できた。
(図13)2015年7月27日、83歳
(図14)2015年7月27日、83歳
(図12)2015年7月27日、83歳
(図11)2015年7月27日、83歳

■PERIODONTAL EXAMINATION

(図15)2015年7月27日、83歳。高年齢と残存歯数ばかりが問題視されているが、歯槽骨の状態、歯肉、Pocketの状態を含めた歯周病を評価すべきである

MOBILITY
 EPP(mm)
 














 EPP(mm)
MOBILITY

■まとめ
●患者は38年間口腔内の疼痛や不自由を感じたことがない。

“中高年、歯は抜ける、毛は抜ける、抜けないのは疲れだけ”(綾小路きみまろ)は、必ずしも当てはまらない!

●筆者は抵抗する。適切なケアと努力(自他)をすれば、充分口腔の健康維持は可能である。

●学術論文では記載できないが、(図16~20)のように、患者のIQ、経済能力、医療側の能力が必要である。揃った時に成功
 (健康維持)する。

●上流と下流で健康格差!下流老人は死亡率3倍に、うつは上流老人の5倍!親の年収が高い子どもの学力は高い!、口腔
 内も同様のことが言える。

経済的ゆとりがなくては、とても維持管理が不可能である。

●初診時から口腔管理を任され、患者・歯科医師・衛生士と三位一体の成果と思われる。


著書“Diathermy”の著作権侵害となるため、禁無断転載・複写。

-健全歯24本、無随歯1本、処置歯3本、骨吸収像無し-

歯周病治療38年経過:83歳(女性)残存歯数28本

(図3)1980年2月4日、48歳。根尖性歯周炎(治療前)
(図1)初診時(1977年11月22日)から3年経過(1980年4月7日)、48歳。初診時には上下左右8番残存。来院時には右下8番Inlay脱離。正常咬合関係であったが、上下左右8番遠心のPlaque Controlの困難さから抜歯を勧めた。ただちに本格的に口腔ケア開始。左下4番根管治療再治療
(図5)2015年12月8日、83歳。38年経過。歯周病に起因する全身疾患はまったくみられない
(図4)2015年12月8日、83歳。正確な診断と治療で、根尖性歯周炎は完治し、38年間無症状で経過
(図2)2014年11月18日、82歳。左下4番は37年間経過後も、異常所見は見られない